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四国昔話八十八ヶ所巡り
伊予屋  愛媛県宇和島市

昔むかし、宇和島城下に伊予屋という大きな酒屋があった。
ある時、この伊予屋の一人娘が、理由は分からんがポックリ死んでしもうたそうな。

伊予屋の主人は、三途の川の渡し賃として普通は一文銭をいくつか棺の中に入れるところを、娘を思って三十両もの大金を入れたそうな。

それを見ていたひとりの番頭がお金欲しさに墓を掘り返したんじゃと。
ところが、棺のフタを開けてびっくり。
なんと、娘が生き還っておったそうな。
娘は、命の恩人だと喜んで、家に帰ったらお礼をすると言ったのじゃが、帰られたらなぜ棺を開けたか詮索されると思った番頭は、お金より秘かに想いを寄せていた娘と一緒になれるまたとない機会だと、とっさに一計を案じたそうな。

「お嬢様、家には帰らないほうがいいでしょう。死んだと思っているお嬢様がいきなり帰ったりすれば、旦那さまと奥さまはびっくりして、心の臓がもちますまい。このままそっとしておいた方が旦那さまも奥さまも長生きできるでしょう。このままどこかへ立ち去りましょう。私がお供します。」

その後、二人は信濃の善光寺へ行ったそうな。
善光寺へ着いたが、どこの宿もいっぱいで泊まるところがない。
困って歩いていると、誰も住んでいない古屋敷があったので、二人はそこに泊まることにしたそうな。
ところが、真夜中頃に何やら妙な気配を感じて目を覚ました二人はびっくり。
黄色い火の玉がフワフワと浮いておった。
その火の玉は二人の側へやって来て、
「わしは金の化身じゃ。この家の主人が金を瓶の中に入れて床下に隠したまま死んでしもうた。わしは世に出て使われたい。だが誰も気づいてはくれん。それで化けて出たのじゃ」
と言って消えてしもうたそうな。

二人が火の玉が消えたあたりの床下を掘ってみると、瓶の中に金がいっぱいつまっておったそうじゃ。
夜が明けると、二人は近所の人に、
「あの家の持ち主はどなたでしょうか。売ってもらいたいのですが」
と聞いてみた。
すると、「売るどころか、あんな化け物屋敷、あんたがどうにかしてくれるなら、ただであげます」といわれたそうじゃ。

二人はその家をもらい受け、手入れをして屋号を「伊予屋」として酒屋をはじめたんじゃと。
化け物屋敷で、べっぴんのおかみさんが酒を売りはじめた、と評判になりたいそう繁盛したそうな。

それから三年が過ぎた頃、宇和島の伊予屋の主人は、信濃の善光寺に行けば死んだ人の霊に会えると聞いて奥方と旅に出た。
善光寺に着くと、同じ伊予屋という屋号の酒屋があった。
同じ伊予屋の屋号にひかれるように、店をのぞいて見ると、何と、死んだはずの娘と、いなくなった番頭がおった。
おまけに赤ちゃんまでいるではないか。
おどろくやら、なつかしむやらで抱きおうたそうじゃ。
娘と番頭がこれまでのことを一部始終話すと、主人は、赤子もいることだし、と言うて伊予へ帰るのをやめ、五人で仲よく暮らしたということじゃ。



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