昔むかし、土佐の山奥(柳野・風呂本)でのお話じゃ。
ある時、海辺から来た魚の行商人が峠辺りを通りかかった。
魚の行商人がふと見ると、ある村人が仕掛けた罠に山鳥がかかっておったそうな。
この山鳥がどうしても欲しくなった魚の行商人は、悪いと知りつつ山鳥を取ってしまったそうじゃ。
ところが、盗んだことに後ろめたさを感じた魚の行商人は、自分が持っておった商売物の黒鯛を三尾、その罠に結びつけたそうじゃ。
びっくりしたのは、村人じゃ。
山に仕掛けた罠に、なんと、黒鯛がかかっておるのじゃからのう。
ほんに不思議なことがあるもんじゃと、村人たちは相談して、祈祷してもらい「黒鯛三社」と名付けて祀り、尊び崇めたそうじゃ。
その後、祀られておった黒鯛様は、寛文6年(1666)の大洪水に押し流され、御神幣(ごしんぺい)が新別(しんべち)の八所鞍馬神社の前の桂の木にかかっておったので、鞍馬神社で祀られていたのじゃが、のち黒鯛様を柳野へ持ち帰り、中山神社へ祀ったそうな。
今も、桂神社(明治4年に中山神社から桂神社へ改称)に祀られておるということじゃ。
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