昔むかし、現在の高知県須崎市に、ねじ金(ねじきん)という、とてつもない力持ちがおった。
あるとき、村の相撲大会に、背丈は六尺(180cm)あまり、体重も五十貫(200kg)ほどの大男が飛び入りしたそうな。
普通の村の者では全く勝負にならんので、村の衆はねじ金に頼みに行ったそうじゃ。
ねじ金はふたつ返事で、裏山で竹をへし折って来て、手でしごいて、それをたすきにかけて相撲大会に行ったそうじゃ。
ねじ金と大男はさっそく相撲をとったのじゃが、あっという間に、ねじ金は五十貫もあるその大男を軽々と頭の上にさしあげて、土俵にたたきつけたそうじゃ。
このねじ金には妹がおって、これがまたとんでもない力持ちじゃったそうな。
あるとき、妹の旦那が風呂に入っておると、にわか雨が降ってきた。
当時の風呂は、家の外へ釜をすえて、釜の下から火を焚いていたものじゃった。
旦那は、「早よう傘を持ってこい」 と叫んだのじゃが、妹はちょうどそのとき裏で炊事をしておって、よく聞こえんかった。
妹は、呼ばれたらしいとはわかったので外へ出てみたら雨が降っておったので、あわてて旦那の入った釜ごと持ち上げて、家の軒下へ運びこんだそうじゃ。
このねじ金と妹の力持ちは、おっ母さん譲りのもので、おっ母さんも普段から鉄の火箸を、ちぎりちぎり、かまどに放りこんでおったということじゃ。
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