昔むかし、中原に若い男が住んでおった。
ある時、この男が柳島に遊びに行って、ほろ酔い気分で帰っておった時のことじゃ。
いきなりどこからか、「おっぱしょ、おっぱしょ(背負ってくれ)」と声が聞こえてきた。
男はまわりをきょろきょろと見わたしたが、誰もおらなんだ。
さては 誰ぞのいたずらじゃな、と思い、男は「おうてやろう、おうてやろう(背負ってやろう)」と答えたそうな。
すると、なにやらズシリと重いものがのってきた。
男は背中にのってきたものが何かわからんまま、重いのを我慢して、橋までやってくると、背中のもんを水の中へ投げ込んだそうじゃ。
次の朝、昨晩のことが気になった男が橋までやってくると、なにやら大勢の人が集まって騒いでおった。
不思議に思った男がのぞいてみると、なんとまぁ、石の地蔵様が水の中に沈んでおった。
「ゆうべのあれは、お地蔵様じゃったのか」
男は「罰当たりなことをしてしもうた」とあわててお地蔵様を元の場所に戻して、たくさんのお供え物をしてお詫びしたそうじゃ。
それ以来、お地蔵様は「おっぱしょの地蔵」と呼ばれて、たいそう有名になったそうじゃ。
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