昔むかし、鳴門の浦に貧しい漁師の家族が住んでおった。
この家族、貧しさに負けず正直にこつこつ働いておった。
一人息子も近所で評判の孝行息子じゃったそうな。
ある時のこと、母親が病気で寝込んでしもうた。
父親と息子は、母親を看病しながら二人交代で漁に出て、なんとか暮らしておったそうじゃ。
そんなある日、母親がある夢を見たそうな。
「おっ父とお前が大漁じゃと言うて、大きな袋を担いで帰ってくる夢を見た。もしかして正夢かもしれん。明日は二人で漁に出てみたらどうじゃ」
母親があまりにも熱心に言うので、次の日二人で漁に出たそうじゃ。
沖に出て網をおろそうとした時、なにやら海の中にキラキラと光るものを見つけた息子は、気になったので、海の中へもぐって行った。
すると、光っているのはお金じゃったそうな。
息子は何度も海にもぐっては拾い、なんと二百両も拾ってきたそうじゃ。
母親の見た夢は正夢じゃったというて、二人は喜んだ。
「これでお母を医者にみせられる」
その後、浦のみんなで拾い上げた銭は千二百両にもなったそうじゃ。
そのお金をお殿様に届けるとほうびもたくさんでて、浦のみんながお金持ちになって、浦では三日三晩祝の酒盛りがつづいたそうな。
いくら貧乏しても、まじめに働いておると良いことがあると、それからも、浦のみんなはこつこつ働いたということじゃ。
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