昔むかし、畑寺と鬼原の境にある大きな松の幹の穴に狸がすみついておったそうな。
ある夏の日、光林寺のお坊さんが大松の辺りを通りかかると、きれいな娘さんが立っておったそうな。
「お坊さん、もう日も暮れかかっております。おなかが すいているのではないですか?あたたかいおうどんがありますから、どうか召し上がって行ってくださいませ。」とその娘が言ったそうな。
お坊さんは、日暮れでお腹がすいていたので、喜んで娘の家について行ったそうじゃ。
娘の家に着くと、温かいおうどんと饅頭がでてきたそうな。
お坊さんは食べてびっくり、そのおうどんと饅頭の美味しいこと、美味しいこと。
お腹がいっぱいになったお坊さんは、うとうととして、ついには寝てしまったそうじゃ。
翌朝、お坊さんは目を覚まして、びっくり!
「大松の狸に、いっぱいくわされてしもうた。」
お坊さんの足元には、木の葉っぱにのった何匹ものみみずと、柏の葉に包まれた馬のフンがあったそうじゃ。
お坊さんは寺に帰ると、何度も口をゆすいだそうじゃが、いやな味はなかなか消えなかったということじゃ。
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