その昔、宇都宮というお殿様が大洲に城を建てておった時のはなしじゃ。
下手の高石垣だけが何度積んでも崩れてしまう。
そのうちに神様のたたりじゃという噂が広がり、とうとう人柱をたてることになったそうじゃ。
もちろん人柱に名乗り出る者はおらず、結局くじで決めることになった。
運悪くくじに当たったのは、おひじという若い娘じゃった。
家族は悲しんだが、どうすることもできなんだ。
いよいよ人柱となる日、役人に「何か言い残すことはないか」と聞かれたおひじは「どうか城下に流れる川に私の名前をつけて下さい」と言って、人柱として埋められてしもうた。
こうして完成した石垣は、二度と崩れることはなかった。
みんなは、おひじの頼み通り、城下を流れる川に「ひじ川(肱川)」という名前をつけて哀れなおひじの霊をなぐさめてやったそうじゃ。
それからというもの、誰が言い出したのか、お城も「ひじ城」と呼ばれ、おひじの住んでいた場所も「ひじ町」という名前で呼ばれるようになったということじゃ。
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