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四国昔話八十八ヶ所巡り
猿額山  香川県東かがわ市・白鳥

昔むかし、東山に沢右衛門という猟師がおったそうな。

ある夜、沢右衛門は、山に入って猪を撃とうと鉄砲に弾をこめて待っておった。
どれほど経ったであろうか、木の間に一つの黒い影が見えたそうな。
沢右衛門は、狙いを定めて引き金を引いたそうな。
バァーン!

ところがどうしたことか、「カチンッ」と音がして弾が撥ね返ったそうじゃ。

驚いた沢右衛門は、二発三発と続けざまに撃ちに撃ったが、弾はことごとくハネ返り、相手はじりじりと迫ってきたそうじゃ。

身の毛のよだつ思いをしながら沢右衛門は、最後の一発を込めると、今はこれまでと覚悟を決め、岩陰に身を寄せて相手の様子をうかがった。

すると、弾が無くなったと思った不気味な相手は身を躍らせながら、沢右衛門めがけて飛びかかってきた。

ここで最後の一発と、沢右衛門が間近に引寄せて狙い打つと、相手は悲鳴を上げて倒れ、それっきり動かなくなってしまった。

夜が明けてよく見ると、全身が銀色に覆われた老猿が倒れており、傍らに阿波の国大山寺の銘の入った梵鐘が、数発の弾痕をとどめて転がっておったそうな。

その後、村人たちは祠を建てて、これを猿神社といって祀り、この山を猿額山とよぶようになったそうじゃ。



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