昔むかし、井内谷の山奥に山じじいという一つ目の妖怪が住んでおったそうな。
ある村に一人暮らしの木こりがおった。
木こりがいつものように囲炉裏で焚火をしておると、ある晩、一つ目の山じじいが黙ってのっそり入ってきたそうじゃ。
木こりが恐ろしくなってふるえだすと、山じじいは「おまえ、怖がってふるえておるな。」と言う。
木こりがなたに手を伸ばすと、山じじいは「おまえ、切るつもりじゃな。」と、木こりの気持ちを次々と見透かすのじゃった。
木こりがしようがないと、あきらめると、山じじいは「おまえ、あきらめたな。」と言う。
木こりが、何気なく持っておった木を焚き火に入れたところ、焚き火が弾けて山じじいに当たったそうな。
山じじいは思いもよらないことに吃驚して、あわてて逃げかえってしもうたんじゃと。
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