昔むかし、58番札所仙遊寺と57番札所栄福寺をひとりの住職さんが兼務していて、一匹の黒い犬を飼っていました。
この犬はとても賢かったため、住職さんは愛犬に二つの寺の使いをさせていました。
山の上の仙遊寺で鐘が鳴れば山を駆け登り、山の麓の栄福寺の鐘が鳴れば山を駆け下りて、住職さんにその用事を伝えるという利口な犬でした。
しかし、ある時、仙遊寺と栄福寺の鐘が同時に鳴ったため、愛犬はどちらに行けばよいのか迷ってしまい、右往左往するうちに途中にある池で溺れ死んでしまいました。
これを悲しんだ村人が、池の湖畔に犬塚をもうけて、その池を犬塚池と呼ぶようになったと言われています。
この池は今も、仙遊寺と栄福寺の中間にあり、静かに水をたたえています。
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