空海と最澄の出会い

空海と最澄が初めて出会ったとされているのは、空海が乙訓寺を去る先々日の10月27日です。
最澄の手紙によれば、奈良興福寺の帰りに乙訓寺を訪ね、一泊したとあります。

8年前、空海と最澄は乗船した船は違いましたが、同じ遣唐使のメンバーとして唐へ渡っています。
しかし、その時はそれぞれが乗船した船が別の場所に上陸し、その後も別行動でしたし、帰国も別の時期でしたので会ったことがなかったようです。

この時期の空海と最澄の地位を比較すると、最澄は国家が公認する仏教７つの中のひとつ天台宗の開祖であり、空海の真言は「宗」として採用されていませんので、最澄が格上ということになります。
しかも、天台宗の２つあるコースの中のひとつとして密教がおかれていましたので、国内においては最澄が密教の第一人者とされていました。

しかし、人格者である最澄は、自らの密教の不完全性を認め、正統者としての地位を降り、空海を師として灌頂を受けるよう願いでたのです。
６年前には、最澄自らが国家命令により宮廷の大官や奈良の長老達に密教の灌頂を行ったことを考えると、信じがたい行動といえるでしょう。

空海は２日後には乙訓寺を出ますので、灌頂は日高雄山寺で行われることになりました。

空海が高雄山寺にもどると、最澄も高雄山寺へ行き、山内の一室を借りて住みました。
そして、最澄は11月15日に和気真綱、和気仲世、美濃種人ら三人とともに、空海から金剛界灌頂をうけたのです。